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ある天使の思い出に

21日に本番の、セントラル愛知響とのベルクの協奏曲のリハーサルのため、今日から名古屋に来ております。ベルクの協奏曲は、私がまだヨーロッパにいた2001年に関西フィルと競演し、その翌年に帰国して日本での演奏活動をしていくことになる一つのきっかけとなった、思い出深い曲です。

数あるヴァイオリン協奏曲の中でも難曲中の難曲といわれますが、技術的に難しいばかりでなく、内容的に少し特別な曲です。少し曲について書きますと、タイトルに書き添えられている「ある天使の思い出に」の「天使」とは、 グスタフ・マーラーの未亡人アルマと再婚相手の間の娘で、19歳の若さでこの世を去ったマノン・グロピウスのことで、マノンへのレクイエムとして1935年に作曲されたのですが、この曲の初演を聴くことなく同年にベルク自身も亡くなってしまいました。
全2楽章で、第一楽章がマノンの幸せな少女時代、第二楽章が病魔との戦いと死について描かれているといわれており、曲の最後の部分にバッハのコラールが引用されています。曲は12音技法で書かれていますが、音列の中には短三和音や長三和音や、曲の冒頭のソロの4つの開放弦の音も含まれており、また音列の最後の4つの音(全音音階)はコラールの初めの4音と同じ(リディア調)だったりと、12音技法でありながら不思議と調性を感じさせるような美しい響きも随所に出てきます。

…なにやら曲目解説っぽくなってきてしまいましたが、実はこの曲、もっといろんなものが隠れているんです。それを解き明かす一つのキーとなるのが数字。23, 10, 28。ベルクの曲を知っている人ならご存知かと思いますし、説明すると長ーくなってしまいますので省略しますが、23はベルク自身を象徴する数字で、10はベルクの愛人ハンナ・フックスを象徴する数字(彼女のプラハの家の住所の番地が10だったそうです)、28は女性を表す数字とされており、この数字やその倍数がテンポ表示を初め、小節数などでいろんな意味を持って来るのです。また、それぞれのイニシャル(AB, HF)の音もそれぞれを象徴しています。
さらには、オペラ「ルル」や「ヴォツェック」のスコアを見ると、同じような音列から色々な意味が見えて来て、まるですごく怪しいサスペンスを見ているような気になってきます。
第1楽章と第2楽章のそれぞれ終わり近くに出てくる美しいケルンテンの民謡(レンドラー)の部分は、ベルクが若いころに娘を生ませた女中マリーの故郷が実はケルンテン地方…
と考えていくと、ベルク自身、自分の死期の近いのを感じ、人生を振り返ってこの曲を書いたのかも知れません。

前にこの曲を弾いた時にもウィーンまで勉強にいったりしましたが、その後「叙情組曲」や「ヴォツェック」を弾いて、また以前よりはちょっぴり人生経験も積み重ねた今(もちろんベルクとハンナ・フックスみたいな関係の経験はないですし(笑)、バッハのコラールの「神よ、どうぞ私を天に召してください。…もう十分です。」という境地まで悟れていない未熟者ですが(苦笑))、今回のためにまっさらな気持ちで勉強しなおしたので、以前より更に内容の濃い演奏ができればと思っています。

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